土地所有権の放棄制度の創設について弁護士が解説

土地所有権の放棄制度

2021年4月21日の国会で所有者不明の土地を増やさないようにするための法改正が成立し(同月28日公布)、相続登記の義務化等が話題になっています。今回の法改正では、望まない相続により土地が放置されるのを防ぐため、一定の要件を満たせば、相続人が取得した土地を手放し、国に引き取ってもらう制度も設けられました。

この制度は、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(いわゆる「相続土地国庫帰属法」)において創設され、交付から2年以内に施行予定です。

弁護士は、過疎地や離島にある不便な立地の山林や原野など、売却が困難であるにもかかわらず、固定資産税などの負担がかかる不動産を手放したいという相談を受けることが多々あります。

しかし、民法第239条第2項は,「所有者のない不動産は,国庫に帰属する。」と規定していますが,土地所有権の放棄の可否については,現行民法に規定がなく,確立した最高裁判例も存在せず,その可否は判然としていません。

また、法務省の民事局回答では、否定的な回答がなされていました。この点、広島高裁松江支部平成28年12月21日判決・判例秘書L07120885(原審・松江地裁平成28年5月23日判決・判例秘書L07151457)は、土地の所有権を放棄した結果、国が所有権を取得したと主張して、登記名義人が国に対して所有権の移転登記を求めた事例です。裁判所は、不動産の所有権放棄を一般論としては認めたものの、本件での登記名義人による所有権放棄は、財産的価値の乏しい土地の管理費用や責任を国に押し付けようとするもので、権利濫用等に当たり無効であると判断して、登記名義人の請求を棄却しました。

一般論として不動産の所有権放棄を認めた点、権利濫用等により規制されることを示した点において、参考となる判決とされています。

このようにこれまで土地の所有権放棄は現実的には不可能と考えられていました。

土地の所有権の放棄は、前記の一審判決が指摘するように管理コストを不当に国へ転嫁されるおそれや、土地を適切に管理しなくなるモラルハザードを引き起こすおそれがあります。所有権を放棄された土地の管理や処分に要する費用を含め、その負担は国、ひいては現在および将来の国民の負担となってしまいます。

他方、現在は適切に管理されている土地が、将来的に管理不全化とならないための防止策も必要であり、また、「相続された土地」が、「相続登記がされることなく放置」され、所有者不明土地となることを防止する必要があります。そして、相続を契機として土地を取得した方の中には、やむを得ずその不動産を所有し管理している方もいらっしゃいます。こういった人たちの負担を一定範囲で負担を免れる途を開くことも相当であると考えられます。

そこで、土地の管理負担を免れる途を開く相続土地国庫帰属制度が創設されました。これについては、いくつかの要件を満たし、法務大臣の承認という行政処分を得る必要があります。

要件

相続等(遺産分割、特定財産承継遺言及び遺贈を含む)により土地を取得した相続人

本制度を利用することができるのは、相続等(遺産分割、特定財産承継遺言及び遺贈を含む)により土地の所有権の全部または一部を取得した方に限ります。

したがって、売買や贈与によって取得された土地や法人所有の土地は対象外です。

また、死因贈与や信託も含まれません。

そのため、次の世代に迷惑をかけないために、生前のうちに子供たちと話し合いをして対策を講じた場合、その処分を受けた相続人は、相続土地国庫帰属制度が利用できないという矛盾が生じてしまいます。
そうすると、逆に問題を先送りにする被相続人を生み出しかねず、所有者不明土地問題の発生を抑制しようという制度目的にも反しかねないという問題があります。

共有の土地の場合

土地が数人の共有に属する場合においては、共有者の全員が共同して行うときに限り、本制度を利用することができます。この場合、相続等以外の原因により土地の共有持分を取得した場合でも、相続等により共有持分を取得した共有者と共同して行うときに限って、本制度を利用することができます(相続土地国庫帰属法2条2項)。

相続等を契機に共有持分を取得した方(土地の取得の原因が売買と相続によるような場合)

例えば、AがBと共同して土地を購入しこれを共有していたが、Bが死亡してAが単独所有となったケースのように、最初の共有持分の取得が相続等以外の原因であった場合であっても、相続等を契機に共有持分を取得したのであれば、本制度を利用することができます。

本制度を利用できない土地

利用できない土地をブラックリスト方式で定めています。

次のような土地は、本制度を利用できません。

① 建物の在する土地(同法2条3項1号)
② 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地(同法2条3項2号)
③ 通路その他の他人による使用が予定される土地(同法2条3項3号)
④ 土地汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質により汚染されている土地(同法2条3項4号)
⑤ 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地(同法2条3項5号)

次のような土地は、土地の状況次第では本制度を利用できない場合があります。

⑥ 崖(勾配、高さその他の事項について一定の基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの(同法5条1項1号)
⑦ 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存在する土地(同法5条1項2号)
⑧ 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存在する土地(同法5条1項3号)
⑨ 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの(同法5条1項4号)
⑩ 通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの(包括条項、同法5条1項4号)

手数料の納付

本制度を利用するためには、後述する負担金とは別に、その審査に要する実費の額を考慮して定められる額の手数料を納めなければならず、手数料は改めて政令で定められます。

負担金の納付

負担金も政令で定められますが、現在は未定です。

もっとも、法務省民事局長が国会で、粗放的な管理で足りる原野であれば10年分で20万円、200㎡程度の市街地にある宅地であれば80万円程度という目安を示しています。

手続の流れ

本制度を利用する場合の流れは、次のような流れとなります。

① 相続等により土地を取得した者から法務大臣への承認申請
② 法務大臣による審査
③ 法務大臣による承認

審査機関が,要件が満たされていないとして放棄を認可しなかったときは,放棄を求める者は,不認可処分の取消しを求める抗告訴訟や行政不服審査(行政不服審査法とは別の法律において定められる特則が規定する審査も含む)によって救済を求めることになると考えられています。

④ 負担金の納付
⑤ 国庫帰属

本制度は利用されるのか?

これまでみてきたように、承認要件を満たしていない土地は国庫帰属できないという点でハードルが高く、申請時に手数料がかかり(同法3条2項)、承認後の負担金の納付もそれなりに必要であり(同法10条1項)、実地調査に協力しなければならない(同法4条1項第3号、17条)という点において、土地を手放したいと考えている人も、本制度を積極的に利用することは躊躇されるものと思われます。

売却が可能であれば、土地を売却した方が良いと考えられます。

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