父に勘当された長男は、遺産分割協議に参加できますか?

Q.父は、生前長男の行状が悪かったので、その態度に激怒し、勘当したのですが、この場合、父の相続の遺産分割協議に参加する資格はありますか?

A.はい。その場合も相続人ですので、長男も遺産分割協議に参加させる必要があります。

「勘当」は、現行民法では法律上の制度になっていません。

単なる音信不通でしかないので、長男さんの居所を探して遺産分割協議の当事者として加える必要があります。

ここで問題となるのは、お父さんが「相続人の廃除」の手続をとっていた場合です。

相続人の廃除とは

「相続人の廃除」とは、相続人から虐待を受けたり、重大な侮辱を受けたりしたとき、またはその他の著しい非行が相続人にあったときに、被相続人が家庭裁判所に請求して虐待などした相続人の地位を奪うことをいいます。

この申し立ては、被相続人が

① 生前家庭裁判所に相続人廃除の申立てをする
② 遺言で相続人廃除をする

の2つの方法のいずれかで行うことができます。

生前、①の方法がとられていて、家庭裁判所が相続人廃除を認めていた場合は、長男は相続人ではありませんので、遺産分割の当事者とする必要はありません。

遺言書で相続人廃除をしていたときは、遺言書に記載された遺言執行者によって、遺言書に遺言執行者の記載がないときは、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらい、遺言執行者が家庭裁判所へ手続を行うことで、廃除されるかどうかが判断されます。その結論によって、相続人に加えるかどうかということになると思いますので、結論が出るまでは遺産分割協議ができません。

遺言書での相続人廃除の手続きには遺言執行者が必要となりますので、遺言書に遺言執行者が書かれていないからといって、ほかの相続人が勝手に相続人廃除の手続きをすることはできません。

以上と異なり、単なる行方不明の時は、長男の現在の戸籍と戸籍の附票を取得すれば、現住所がわかることが多いです。

調査をしても行方不明な場合は?

調査しても行方不明のときは、不在者の財産管理人を家庭裁判所で選任して、財産管理人との間で遺産分割協議をすることができます。

また、生死不明であるというときには、失踪宣告の申立をすることもできます。

失踪宣告は、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない不在者について、その生死が7年間明らかでないときに、その期間が満了したときに死亡したものとみなされます。

つまり、この宣告により、長男は亡くなったものとして扱われ、遺産分割協議は、不在者である長男以外の相続人全員で行えばよいということになります。

ちなみに、戦前の旧民法及び旧戸籍法では、「勘当」という法律上の制度があり、戸主の意に沿わない居住・結婚・養子縁組をした家族に対して戸主が当該家族を離籍をした上で復籍を拒むことができる旨の規定がありました。

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この記事を担当した弁護士

弁護士法人ユスティティア 森本綜合法律事務所

所長弁護士 森本 精一

専門分野

相続、離婚など家事事件、交通事故被害者救済、企業法務

経歴

昭和60年に中央大学を卒業、昭和63年司法試験合格。平成3年に弁護士登録。

平成6年11月に長崎弁護士会に登録、森本精一法律事務所(現弁護士法人ユスティティア 森本綜合法律事務所)を開業。長崎県弁護士会の常議員や刑事弁護委員会委員長、綱紀委員会委員を歴任。平成23年から平成24年まで長崎県弁護士会会長、九州弁護士会連合会常務理事、日弁連理事を務める。平成25年に弁護士法人ユスティティアを設立し現在に至る。

現在も、日弁連業務委員会委員や長崎県弁護士協同組合理事などの弁護士会会務、諫早市情報公開審査委員委員長などの公務を務めており、長崎県の地域貢献に積極的な弁護士として活動している。

相続問題解決実績は地域でもトップレベルの300件を超える。弁護士歴約30年の経験から、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。

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