財産の 使い込み

想定されるケース

被相続人の生前に被相続人名義の預貯金が引き出されている場合,被相続人に無断で権限なく行ったものであるとして,使われた相続人(裁判では原告)が使った相続人(裁判では被告)に対して,不法行為または不当利得に基づく返還請求をするケースを想定してみましょう。

法律構成は?

不当利得とか不法行為という法律用語ですが,二重に請求できるものではなく,どちらか一方で請求することができるというものと理解して下さい。
両者の違いは,
①時効期間の長さ(不当利得は行為の日から10年〔民法改正で変更される予定です〕、不法行為は損害及び加害者を知ったときから3年)
②弁護士費用が請求できるか(不当利得ではできないが,不法行為では可能)
という違いがあります。
不法行為による場合>>
不当利得による場合>>

不法行為による場合

①被相続人の預貯金が存在したこと及びそれが引き出されたこと
②被相続人の預貯金を引き出したのが被告であること及び被相続人の預貯金の侵害について被告に故意または過失があること
が要件となります。
まずは,事実立証のための証拠収集が必要になります。

預貯金の調査

①被相続人の預貯金の存在及び引出の立証のためには,被相続人名義の預貯金の調査が必要です。

相続人であれば,ご本人で,自らが相続人であることを示す戸籍などを取り寄せ,身分証明を示して被相続人の取引があった各金融機関から履歴を取り寄せることが可能です。
弁護士に依頼して,23条照会(弁護士会の照会手続)で履歴を取り寄せることも考えられます。この場合も照会をかける依頼者が相続人であることを示す戸籍は必要で,弁護士が職権で取り寄せることになります。
また,ご本人か弁護士かいずれかが取り寄せるにしても,対応する金融機関のどこの部署に対して請求するかは,それぞれ確認しておく必要があります。

法律上の問題点

②の要件の関係で,
被告が預貯金を引き出す権限を有していたかについて、
A説:原告が「被告が引き出し権限を有していなかったこと」を主張立証すべきとの見解
B説:被告が「被告が引き出し権限を有していたこと」を主張立証すべきとの見解
とに分かれています。
預貯金の名義人である被相続人以外の者=被告によって預貯金が引き出されたという事実だけで不法行為の違法性を基礎付ける事実といえるか?が争点になります。もしいえないとすればA説を,いえるとすればB説をとることになります。
親族間の情誼や信頼関係に基づいて被相続人の介護や財産管理等が行われることが多いという実情を重視し,そのような情誼や信頼関係に基づく行為について,客観的な証拠に基づく証明を要求し,それができなければ損害賠償責任を負担せよというのは酷であるとすれば,A説をとることになります。
一方で、親族とはいえ他人の財産の処理に関わる以上は関係者に自己の正当性を説明できるように客観的な証拠を残すよう慎重な対処をすべきであるとすれば,B説をとることになります。
実際に,被相続人がまだ生存されていて,被相続人から管理をゆだねられて管理をしようとする立場で,これから管理をしていこうとする場合には,B説のように,領収書をすべてもらい,明細を明記して説明できるような会計処理をしておくべきですが,裁判になったときには,厳密な立証責任としてA説をとるか,B説をとるかだけで結論を出すことは少ないです。
被告の預貯金の引き出し権限については,原告であっても被告であっても,それぞれの立場で主張立証しておくのが通常であるといえます。
引出権限の有無は裁判の過程の中で明らかになることが多く,立証責任で勝敗が分かれることが少ないことも,両説が存在し,定説がない原因の一つとなっています。
事実立証のための証拠としては,領収書や使途の説明を示す会計帳簿が使った相続人から示されるということになるかと思います。
権限が与えられていたかについては,被相続人が認知症で意思表示ができる状態ではなかったという場合には,無権限であったといいやすいので,病状を示す書類(カルテや看護記録,長谷川式スケールの検査結果など認知症の程度を示す書類)を病院から取り寄せることが考えられます。
損害についても見解の相違があります。
C説 預貯金債権の消滅それ自体が損害,被告の引出により被相続人の預貯金債権が消滅した時点で損害の発生を肯定する
D説 預貯金債権の消滅だけではなく,払戻金の着服,私的流用,被相続人の意思に反する使途への使用などにより被相続人の財産状態に実質的不利益が生じたことが損害発生の要件であるとする
正当な受領権限を有しない者が債務者から弁済を受け,これによって債権が消滅した場合,その債権の消滅自体により債権者に損害が発生し,不法行為が成立するというのが,伝統的な学説であり,判例も同様の見解であるとされていることから,C説が有力であるが,預け替えの事実が明らかになれば,引出権限の有無を問わず,損害とはならないことなどからD説も有力であり,理論的な決着は付いていません。

不当利得による場合

不当利得を理由として返還請求する場合,
① 被相続人の損失(預手預金債権の消滅)
② 被告の利得(被告による払戻金の取得)
③ ①と②との間に因果関係があること
④ 被告に預貯金の引出権限がないこと

返還請求をする側が主張立証することになります。

そして,何をもって損失又は利得というかについて,不法行為における損害で論じたC説とD説の対立があります。ここでもどちらが正しいかについて,議論が実務家の間で分かれており,結論は出ていません。

遺産分割調停との関係

遺産分割調停時に遺産の中に含める合意をして,使途不明金も一緒に解決することは可能です。
しかし,金額について,争いがある場合には,調停では解決できないので,使途不明金の解決は通常の民事の裁判になります。
裁判が起きると,それまで進行していた遺産分割調停をどうするかという問題があります。使途不明金の解決ができなければ,遺産全体の解決もできないものとして,遺産分割調停は取り下げ,民事裁判による使途不明金の解決を待つことが多いようです。

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当事務所によくお問い合わせいただく相談内容

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この記事を担当した弁護士

弁護士法人ユスティティア 森本綜合法律事務所

所長弁護士 森本 精一

専門分野

相続、離婚など家事事件、交通事故被害者救済、企業法務

経歴

昭和60年に中央大学を卒業、昭和63年司法試験合格。平成3年に弁護士登録。

平成6年11月に長崎弁護士会に登録、森本精一法律事務所(現弁護士法人ユスティティア 森本綜合法律事務所)を開業。長崎県弁護士会の常議員や刑事弁護委員会委員長、綱紀委員会委員を歴任。平成23年から平成24年まで長崎県弁護士会会長、九州弁護士会連合会常務理事、日弁連理事を務める。平成25年に弁護士法人ユスティティアを設立し現在に至る。

現在も、日弁連業務委員会委員や長崎県弁護士協同組合理事などの弁護士会会務、諫早市情報公開審査委員委員長などの公務を務めており、長崎県の地域貢献に積極的な弁護士として活動している。

相続問題解決実績は地域でもトップレベルの300件を超える。弁護士歴約30年の経験から、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。

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