子どもない夫婦の相続対策のポイントとは?残された配偶者を守るため
目次
子どもがいない夫婦の相続で、よくある相続トラブル
「相続人が配偶者と兄弟姉妹になるケース」は相続トラブルが発生しやすい間柄と言えます。子どもがいない夫婦はきちんと対策をしておかないと、思わぬトラブルに巻き込まれてしまいます。
よくあるトラブル
・遺言書を残さないままお亡くなりになってしまう
・亡き配偶者の親族(配偶者が早逝され、配偶者の両親との話し合いが必要な場合など)と話したくない
上記のケースは遺産相続で揉めることは多いです。
子どものいない夫婦の場合、亡くなった方の両親・兄弟・甥姪が相続人となります。実家と良好な関係にあれば、さほど問題はないでしょう。しかし、そうでない場合、自分の血族ではない「配偶者の家族」と話し合いをする必要があるので、残された配偶者の負担が大きくなってしまいます。
相続人の法定相続分
被相続人に父母がいる場合 | 配偶者2/3
父母1/3 |
被相続人に父母がいないが
兄弟姉妹がいる場合 |
配偶者3/4
兄弟姉妹1/4 |
相続財産に占める自宅不動産の割合が多い場合
被相続人が自宅不動産を所有し、その配偶者とともに住んでいた場合には、この自宅も遺産分割の対象となります。長年住み慣れた現在の自宅に居住し続けるというケースが最も多いのは、被相続人の配偶者です。しかし、他に相続人がいることで自宅不動産を巡って争いが生じやすくなります。
先ほど説明したとおり、亡くなった方の親が亡くなっている場合は、配偶者の相続分は全体の4/3となり、残りである1/4は、亡くなった人の兄弟姉妹に権利があります。兄弟姉妹が権利主張をされず、配偶者に持分を全部帰属させて良いとのご意向であれば、問題がありません。しかし、兄弟姉妹が権利主張をされた場合、残された配偶者が自宅を相続するには亡くなった人の兄弟姉妹に遺産の4分の1に当たる額を金銭などで支払うなどして解決する必要があります。もし、残された配偶者には他に資産もなく、これから年金中心の暮らしを考えていると、その資金を調整することが難しいと考えられます。
また、遺産も不動産が中心で、現金や預金が少ないと、兄弟姉妹に分けるべき1/4相当の金額を出すことができないという問題が発生します。
子どものいない夫婦の相続対策とは
1.生前に遺言書を作成し残しておく
この場合、配偶者以外の法定相続人は誰になるかを考えておく必要があります。配偶者のご両親がご健在であればご両親が、ご両親がすでにお亡くなりであれば、ご兄弟が法定相続人です。
ご両親の場合には、全部を他方配偶者に相続させるとした場合、ご両親にも遺留分が発生します。そのため、遺言でご両親に対する遺留分を配慮した内容にしておくべきかを事前に検討する必要があります。
これに対し、兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合、兄弟姉妹や甥姪には遺留分がないため、配偶者にすべてを相続させるという遺言を残しておけば、その通りに相続させることができますので、有効な生前対策となります。
2.生前に財産を配偶者に贈与しておく
自宅不動産を贈与する場合、税法上は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例がございます。
但し、生前贈与も相続人が婚姻や養子縁組のため、または生計の資本として受けた贈与の場合は、相続開始前10年間に行われた贈与に限り、遺留分侵害額請求の対象となりますので、注意が必要です。
3.生命保険の受取人を配偶者にしておく
保険は、契約により発生する権利ですので、原則として法律上は相続財産とはなりません。したがって、生命保険の受取人を配偶者にして、ほかの相続人との間の代償金や遺留分侵害額請求がなされた場合の原資にしたりすることも考えられます。
参考までに当事務所で扱った、遺言を残さなかったケースについての解決事例をあげておきます。
解決事例1
子供がいない夫婦間で、夫が若くして急逝し、夫のご両親と遺産分割協議が必要になった。ご両親からは法定相続分の権利主張がなされたが、預貯金などの遺産が少なく、法定相続分に該当する代償金を支払うことが難しい。
話し合いの結果、全部を妻にし、妻も若くて、稼働能力があるので、金融機関から借り入れをして、代償金を準備、その代償金をご両親にお支払いすることで解決。
解決事例2
子供がいない夫婦で、夫が死亡、夫のご両親はすでに他界しており、夫の兄弟が2人いる。妻は稼働能力がなく、遺産としての預貯金も少ないし、妻自身の財産も多くはない。
妻には配偶者居住権のみを認めて、預貯金もすべて取得させ、所有権を兄弟2人が取得、妻死亡後により配偶者居住権が消滅し、兄弟2人は不動産を処分できるという約束で解決。
解決事例2では、遺言書を書いておけば、兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言のとおりの相続が実現できますが、解決事例1のような場合、病気で早逝することを前提に、例えば配偶者居住権を遺言書で認める方法もあります。遺言によって配偶者居住権と一定の財産を配偶者に取得させる場合に、残された配偶者がこの配偶者居住権だけは欲しくないと考えた時に、「遺贈」と書かれていれば、遺贈の一部(配偶者居住権のみ)を放棄することができますが、「相続させる」と書いてしまうと、一部放棄はできず、相続放棄するしかなく、すべての財産を取得できなくなってしまいますので、注意が必要です。
遺産分割に関して不安があれば専門家へ相談を
トラブルになりやすいケースとしては「相続財産に占める不動産の割合が大きい」「(何回か離婚しているため)家族関係が複雑」「子どもがいない夫婦」などが挙げられます。
トラブルを回避する方法に遺言の活用や代償分割がありますが、実際に対策を考える場合には、相続問題の専門家である弁護士への相談が不可欠です。
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