遺産分割協議書の作成方法

ご家族がお亡くなりになって、相続が発生すると、遺言がない場合は故人の遺産の分け前を相続人間で取り決める遺産分割協議」を行う必要があります。

その「遺産分割協議」を取り決めした内容をまとめたものが遺産分割協議書です。

遺産分割協議書があれば、不動産の所有権移転登記や預金の名義変更などの相続手続を行うことができます。

逆に言うと、遺産分割協議書がなければ、これらの相続手続が行えません。

しかし、実際に遺産分割協議書を作成するとなると、遺産分割協議書の書き方がわからない!という悩みをよくお伺いいたします。

そこで、この記事では、長崎県で相続業務を25年以上取り組んできた相続や遺産分割に詳しい弁護士が、遺産分割協議書の書き方を解説いたします。

遺産分割協議書のひな型もダウンロードできるようにご用意しておりますので、あわせてご覧いただければと思います。

(下記をクリックするとひな型がでてきます)

遺産分割協議書の作成でお困りの方へ>>

遺産分割協議書に記載する項目

遺産分割協議書に記載すべき内容は大まかには下記の通りとなっております。

 

・被相続人は誰か、どこに住んでいたか
・相続人は誰か、どこに住んでいるか、関係は何か
・相続人全員が遺産分割協議で合意した内容
・誰が何をどのくらい相続したか
・後から発見された遺産をどうするか
・協議による合意が成立した年月日
・相続人全員の署名(または記名)と実印による押印

遺産分割協議書の作成方法

作成の手順

遺産分割協議書の作成の手順は、下記のようになっております。

1、作成する様式を決めます。

遺産分割協議書は、遺言書と異なり、手書きでもパソコンでも作成が可能です。しかし、後の修正を考えると、パソコンで作成して随時変更していく方が便利であろうと思います。どちらについても、ひな型を参考にしていただければ、作成する様式は問いません。

2、タイトルを「遺産分割協議書」とします。

「遺産分割協議書」とした場合は、相続人全員の署名と押印が必要です。

「遺産分割証明書」の場合は、1人1人の相続人の署名押印で足りますが、最終的には相続人全員分がないと協議が成立したとはいえないことになります。

ここでは、典型的な「遺産分割協議書」の場合について説明します。

3、亡くなられた方の本籍地と住所地を記載します。

この情報は、相続人調査の際に取り寄せている戸籍や住民票または戸籍附票から把握できます。

相続人調査について>>

相続財産調査について>>

4、亡くなられた方の氏名と死亡日を入れて、前書き(ひな型に書き方があります)を記載します。

5、誰がどのプラスの財産(預貯金や不動産など)を相続するのかを記載します

「1,2,3、、」と項目付けして記載していきます。この項目付けには定型はありませんので、わかるようにしておけば問題ありません。また、記載する順番に決まりはありませんが、年齢順である場合が多いです。

6、次にマイナスの財産(借金やローンなどの債務)の相続方法を記載していきます。

こちらも項目付けして記載していきます。

但し、債権者の同意なくして法定相続分を超えた負担を債権者に主張できませんので、相続人間での内部的な取り決めという位置付けになります。

7、遺産分割協議が終了した後に判明した財産(後日判明した財産)の取扱いについて記載します。

遺産分割協議書に署名と実印が押されれば、基本的に遺産分割協議は終了となりますが、その後に判明した財産について、どのように取り扱うかを取り決めし、記載する項目です。

遺産分割協議が終了した後に発見された再度遺産分割協議を行う、という旨を記載することもありますし、全ての遺産分割協議が終了したものとして清算条項を入れる場合もあります。

8、作成した年月日を記載します。

9、相続人全員の住所・氏名を記載し、署名と実印(認印)を押印して完成です。

遺産分割協議書の最後には、相続人全員の住所・氏名を記載し、自署の署名と実印(認印)を押印します。

※遺産分割協議書が複数枚になる場合、製本して実印を使って割印を押して完成となります。

気を付けるポイント

ここでは、遺産分割協議書を作成する上でのポイントをまとめました。

①代償分割をする場合の記載方法

②相続人の中に未成年者や成年被後見人など、意思能力がない人が相続人にいる場合

③相続人の未成年者と法定代理人が同じ相続人となる場合は裁判所に特別代理人の選任が必要となります

④不動産について記載する場合は登記簿謄本をそのまま写して記載しましょう

⑤預貯金、株式については口座番号まで特定できるように記載しましょう

 

①代償分割をする場合の記載方法

遺産分割協議の結果、不動産や非上場の株式など、分割が難しく評価額の一部を現金で代わりに支払う、代償分割を実施する場合は下記のような記載が適切となります。

1-1、相続人 山田 宗隆は、その取得した相続財産の代償金として、相続人 山田 宗義に対して、金〇〇万円を支払う。

②相続人の中に未成年者や成年被後見人など、意思能力がない人が相続人にいる場合

相続人の中で、意思能力がないとみなされる人がいる場合には、未成年者の場合は法定代理人である親権者が、成年被後見人等の場合は家庭裁判所が選任した後見人等が本人の代わりに遺産分割協議に参加し、その意思を代わりに決定することになります。

その場合、遺産分割協議書の最後の署名押印欄が通常とは異なる書式で記載する必要があります。記載方法は、相続人の氏名の後ろに法定代理人であることを明記し、親権者や後見人等の法定代理人が署名し実印で捺印を行います。

 

③相続人の未成年者と法定代理人が同じ相続人となる場合は裁判所に特別代理人の選任が必要となります

相続人の中で、未成年者とその法定代理人である親が同じ相続人になる場合は、法定代理人自身の立場と未成年者の利益が対立することになるので、未成年者の利益を図るために、家庭裁判所に特別代理人の選任が必要となります。

 

④不動産について記載する場合は登記簿謄本をそのまま写して記載しましょう

遺産分割協議書の中で、不動産の分割事項を記載することがありますが、その不動産の内容は一言一句間違えないようにするためにも、登記簿謄本(全部事項証明書)の内容をそのまま記載しましょう。

なぜなら、不動産の名義変更(相続登記)の際には遺産分割協議書が必要となり、不動産の登記簿謄本と遺産分割協議書に記載された不動産の記載が違っていた場合、最悪不動産の名義変更ができない可能性があります。

確実な記載をするためにも、登記簿謄本(全部事項証明書)を取り寄せておきましょう。

具体的に記載すべき部分は、下記のとおりです。

 

土地 所在、地番、地目、地積
建物 所在、家屋番号、種類、構造、床面積

 

※1建物がマンションの場合

遺産のうち、マンションの1室のみがある場合の書き方も、通常の土地や建物と同様に、登記簿謄本に沿った記載となります。ただし、この場合は、建物全体の記載をした後に所有している専有部分と持分である敷地権の記載をしなければならないため、表記が長くなります。

記載方法の例を以下に記載しております。

(引用)

(1) 土地及び区分建物(敷地権の登記なし・土地及び区分建物所有者 ○○○○)

 

所在  ○○市鳴滝三丁目○番

地番  ○番○

地目  宅地

地積  ○○○○.○○平方メートル

共有者  ○○○○  持分  ○○○○○分の○○○

(一棟の建物の表示)

所在  ○○市鳴滝三丁目○番地○

構造  鉄筋コンクリート造陸屋根5階建

床面積  1階  ○○○.○○平方メートル

2階ないし5階  各○○○.○○平方メートル

(専有部分の建物の表示)

家屋番号  ○○市鳴滝三丁目○番○の○

建物の名称  ○○○号

種類  居宅

構造  鉄骨造1階建

床面積  ○階部分○○.○○平方メートル

 

(2) 区分建物(敷地権の登記あり・区分建物所有者○○○○及び○○××共有)

 

(一棟の建物の表示)

所在  ○○市鳴滝三丁目○番地○

建物の名称  鳴滝マンション

(専有部分の建物の表示)

家屋番号  ○○市鳴滝三丁目○番○の○

建物の名称  ○○○号

種類   居宅

構造   鉄骨造1階建

床面積  ○階部分○○.○○平方メートル

(敷地権の目的たる土地の表示)

土地の符号  1

所在及び地番  ○○▲丁目○番○

地目  宅地

地積  ○○○.○○平方メートル

(敷地権の表示)

土地の符号  1

敷地権の種類  所有権

敷地権の割合  ○○○○○分の○○○

共有者  ○○○○  持分○○分の○

共有者  ○○××  持分○○分の○

※2不動産が共有持ち分の場合

被相続人が土地の権利のうち、3分の1のみを所有している場合(これを共有持ち分といいます)、遺産分割協議書にもその旨を記載する必要があります。

こちらの記載は上記のマンションほど、手間はかからず、不動産の情報の最後に「持分」の表記をするのみです。

記載の例は下記のとおりです。

所在     〇〇県〇〇市〇〇3丁目

地番     2番11

地目     宅地

地積     55.51平方メートル

のうち被相続人の持分       3分の1

 

⑤預貯金、株式については口座番号まで特定できるように記載しましょう

預貯金や株式については、金融機関名はもちろん、支店名、普通・定期などの種別、口座番号を特定できるように記載しましょう。(ひな型には銀行の普通預金の場合と定期預金の場合を記載しております)

※退職金や生命保険金は、あらかじめ契約時に受取人が定められており、遺産分割協議の対象外となっているため、遺産分割協議書に記載する必要はありません(受取人が被相続人の場合は、遺産になります)。

⑥必ず、自筆のサインと実印の押印をするようにしましょう

遺産分割協議書には、後日のトラブルを避けるためにも相続人全員が自筆でサインをすることが望まれます。また押印は、必ず実印で押印しましょう。

その際には印鑑証明書もセットで必要となります。提出先によっては、自筆の署名・実印の押印ではないと受理してくれない場合がありますので、必ず確認しましょう。

遺産分割や遺産分割協議の交渉・協議書の作成でお困りの際は弁護士に相談しましょう

・遺産分割協議の際に、家族や親せきみんなが納得いくように遺産を分けたいが、関係性のよくない相続人(兄弟や親族)がいる

・遺産分割をしたいが、被相続人(亡くなった父や母)が認知していた婚外子がおり、連絡が取れない

・遺産分割協議の交渉と協議書の作成を自分で進める余裕がないので専門家にお願いしたい

・遠方に親戚がいる、自分の仕事が忙しいなど、遺産分割を自力で進めるのが難しく、遺産分割協議の交渉から協議書の作成までお任せしたい

上記のようなことをお考えの方は、ぜひ一度長崎県の相続に強い弁護士に相談しましょう。

遺産分割協議書は相続人全員の合意がないと成立せず、遺産を分けることができません。その場合、例えば預金の引き下ろしができなくなったり、不動産の名義変更ができなくなったりと、相続人の方々がお困りになることがとても多いです。

早期に遺産を全員が納得できるように分配するために、トラブルや意見の相違が発生すると考えられる場合は、一度弁護士にご相談ください。相続人の方々が得られる適切な相続財産額や、方法をお伝えすることができます。

遺産分割協議書の作成は細かなことまで気を遣って作成することになります。

当事務所にご相談いただき、やっとの思いで遺産分割協議をまとめたものの、そのあとの遺産分割協議書の作成でさらに大変な思いをされる方を多く見かけております。

また、その遺産分割協議書の内容に不備が見つかり、再度遺産分割協議をすることになった事例や、場合によっては遺産分割協議書によって相続争いが発生してしまった事例もございます。

そこで、当事務所では、遺産分割協議の交渉サポートに限らず、遺産分割協議書案の作成、遺産分割協議書の作成代行をお受けしております。

長崎県で遺産分割や遺産分割協議書の作成などでお困りでしたら当事務所までお気軽にご相談ください。

相談予約は下記の電話番号または問い合わせフォームよりお申し込みください。

 

〇長崎市周辺にお住まいの方:長崎事務所にお電話ください
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当事務所によくお問い合わせいただく相談内容

遺産分割 遺留分遺言作成

この記事を担当した弁護士

弁護士法人ユスティティア 森本綜合法律事務所

所長弁護士 森本 精一

専門分野

相続、離婚など家事事件、交通事故被害者救済、企業法務

経歴

昭和60年に中央大学を卒業、昭和63年司法試験合格。平成3年に弁護士登録。

平成6年11月に長崎弁護士会に登録、森本精一法律事務所(現弁護士法人ユスティティア 森本綜合法律事務所)を開業。長崎県弁護士会の常議員や刑事弁護委員会委員長、綱紀委員会委員を歴任。平成23年から平成24年まで長崎県弁護士会会長、九州弁護士会連合会常務理事、日弁連理事を務める。平成25年に弁護士法人ユスティティアを設立し現在に至る。

現在も、日弁連業務委員会委員や長崎県弁護士協同組合理事などの弁護士会会務、諫早市情報公開審査委員委員長などの公務を務めており、長崎県の地域貢献に積極的な弁護士として活動している。

相続問題解決実績は地域でもトップレベルの300件を超える。弁護士歴約30年の経験から、依頼者への親身な対応が非常に評判となっている。

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