当方が主張する贈与契約の不存在が裁判で認められた事例

状況

 

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Aさんは,Bさん(故人)との間に子どもが3人(X1,X2,Y)いました。Aさんが亡くなり,X1,X2,Yさんが相続しました。
Yさんは,生前にAさんが作成したという贈与契約の書面(以下本件贈与契約といいます)を根拠に,法定相続分での遺産分割を拒否しました。そこで,X1,X2さんは,本件贈与契約の不存在を求めて裁判を起こすことにしました。

弁護士の関わり

弁護士は,X1,X2さんの代理人となって,本件贈与契約の不存在または無効の裁判を提起しました。
本件贈与契約がAさんのほかの筆跡と比べて異なること(偽造文書の主張),Aさんには生前認知症があって入院歴があること,Yさんは,X1,X2さんとの間でAさんの生前に各250万円ずつを渡し,相続権利放棄書に署名押印させましたがそのときも本件贈与契約についての話がなかったこと(本件贈与契約は,放棄書と近接した時期に作成されています),その後のAさん死亡直後にも本件贈与契約の話はなく,遺産分割協議の話のみに終始したこと,その4ヶ月後の話し合いでも本件贈与契約の話はなく,各250万円ずつを交付しているとの話しかなかったこと,Yさんに代理人がついたあと本件贈与契約の存在がはじめて明らかにされましたが,当弁護士からの開示請求にもかかわらず本件贈与契約は開示されなかったこと,当弁護士から遺産分割調停を申し立てたところ,作成から9年以上を経過した時点ではじめて,X1,X2さんらに本件贈与契約が開示されたことというこれまでの経緯を根拠にして裁判を提起したところ,裁判所も当弁護士の主張を認め,本件贈与契約の不存在を認めました。

補足

法律上,相続開始前の相続の放棄は無効であるとされています(新版注釈民法(27)・相続(2)・432頁〔谷口知平〕)。したがって,Yさんが,X1,X2さんとの間でAさんの生前に各250万円ずつを渡し,相続権利放棄書に署名押印させていたとしても,X1,X2さんらの権利がなくなることはありません。
本件贈与契約については,裁判所において,Aさんの筆跡との間の筆跡鑑定が行われました。Aさんの筆跡とはやや類似性は窺われるが,明確な異動の判定は困難,Yさんの筆跡とは,異なる人の筆跡の可能性大と考えられたが,明確な異動の判定は困難というものでした。
しかし,裁判所は,鑑定対象となっていない,ほかの書面でのYさんとの筆跡の類似性を指摘した上,本件贈与契約は,X1,X2さんらとの交渉が行き詰まったYさんにおいて,裁判における決着を視野に入れ,放棄書の作成された日付に近接した日付をもって,後日自らこれを作成し,または第三者をして作成させたとの疑いを払拭し得ないと判断しました。
本件は,Yさんが控訴したあと,双方が希望しない不動産を0評価し,相続人のいずれかが希望する不動産については相続税評価として計算し,X1,X2さんらが生前もらった250万円を差し引く計算で,遺産分割についての和解が成立しました。
生前作成されたという贈与契約が存在している場合であっても,その主張されるいきさつからみると,真正に成立したものかの疑いが生じますので,そのまま鵜呑みにすることなく早めに弁護士に相談されることをお薦めします。

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