遺産分割審判になった事例(寄与分が認められた事例)
状況
Aさんは,妻Y1と,6人の子どもがあり,Bさんは,Aさんより先になくなっていて,D,E,Fの子ども(Aさんからみると孫)が3人いました。Aさんが亡くなり,相続人のX,Y1~Y5,D,E,Fとの間でAさんの遺産の相続問題が発生しました。 相続財産は不動産が複数と預貯金類がありました。 |
弁護士の関わり
弁護士は,Xさんの代理人となって,遺産分割調停を申し立てました。Xさんは,D,E,Fさんから持分の譲渡を受け,法定相続分1/6となり,Xさんの夫の事業に使用している土地をXさんが取得して,代償金を支払うことになりました。Xさんの寄与分は夫の事業と経済的に一体であることから,夫からAへの見舞金の給付として約1200万円が認められました。
Y1は,別の不動産を(敷地部分は生前贈与を受けた特別受益とされた財産),Y5もまた別の不動産を,Y4は,預貯金と株を取得し,Y2,Y3は代償金を多くもらうという形で,遺産分割の審判が出されました。
補足
Xさんの夫の事業に相続財産を取得することが経済的目的であったので,それが達成できたので大きな成果を上げることができました。寄与分は,本来相続人の寄与行為でなければならず,配偶者の寄与行為は考慮されないのが原則です。しかし,結婚以来家計が同一で事業の経理を含め全ての金銭管理をしており,事業の開業準備や開業後の経営,金銭給付に関して夫は全てXと相談しながら行っていたことから,夫の寄与行為はXさんの寄与行為と同視できるとして,Aさんが働けなくなってからの見舞金の給付を特別の寄与と判断しました。
もっとも,Xさんの夫は,Aさん所有の不動産の固定資産税や所得税,市県民税を支払ってあげており,これも寄与分にあたるとの主張に対しては,Aさんとの間の黙示の合意に基づく義務の履行として,無償の財産的給付に当たらないと判断しました。
なお,代償金の支払いを少なくするためには,持分を要らないと言って放棄してくれる相続人から持分の譲渡を受けることが有用であることはいうまでもありません。
法律上の問題点
Xさんの取得した不動産は,Xさんの夫が自己の事業のために,有償で借りており,借地権が存在していました。路線価という税務署の相続税課税の根拠となる価格が存在する地域で,借地権割合も決まっていましたが,Y1さんらが,相続税評価では応じなかったため,不動産鑑定が実施され,その鑑定結果にしたがって審判がなされました。
不動産の評価は,合意ができれば,固定資産税課税評価,相続税評価などで行うこともあります。
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