遺産分割審判になった事例(後妻と先妻との間の子との争い)
状況
Aさんは,先妻のBさん(Bさんとは死別)との間に子どもが2名あり,Xさんと再婚,Xさんとの間にCさんという子どもがいました。Aさんが亡くなり,相続人のX,Y1,Y2,Cさんとの間でAさんの遺産の相続問題が発生しました。
Aさんは公正証書遺言で所有不動産を除く年金をXさんに相続させる遺言を作成していました。 |
弁護士の関わり
弁護士は,Xさんの代理人となって,遺産分割調停を申し立てました。Cさんから持分の譲渡を受け,法定相続分4/6となり,不動産もそこに居住しているXさんが相続し,代償金を支払うことになりましたが,不動産の評価について折り合いがつかず,鑑定の上,審判となり,代償金を支払って,Xさんへ登記を移転しました。
補足
先妻のお子さんと後妻さんとは心情的にもめる場合が多いので,遺言書を作ることがかならず必要だと思います。遺留分の問題もありますので,事前に弁護士の相談を受けてから作成されるのがベストです。Y1,Y2さんらは,Xさんが公正証書遺言を知らせず,年金を自分のものにしたから,故意に隠匿したとして相続欠格である旨主張していましたので,協議による解決は難しく,最初から調停を申し立てました。
公正証書は原本が公証人役場に保管されているので,故意の隠匿には該当しないと考えられます。調停の初期の段階から,裁判官よりその旨がY1,Y2さんらにも示されましたが,納得されず,審判までいった事例です。代理人が双方につき,協議段階から合理的な話ができれば,相手方にとっても合理的な解決ができたかもしれません。
不動産評価について争いがあれば,鑑定せざるをえませんが,鑑定費用もかなりかかるので,多少金額が上昇しても鑑定費用に持っていかれてあまりメリットがない場合もあり,この点もよく考えて判断することが必要です。
法律上の問題点
遺産である不動産に,相続人Xさんが居住している場合,使用貸借が存在し,使用貸借の評価分を不動産の評価から減価すべきではないかが問題となります。
使用借権相当額を控除するのが実務上の主流の考え方のようですが,使用借権を設定されたとされる相続人は使用借権相当額が特別受益とされるので,結局更地評価で取得することになるとされています(東京弁護士会相続・遺言研究会編「実務解説 相続・遺言の手引き」73頁)。
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